「地価汚染〜地価に潜む土壌汚染」
足立良夫 著
価格 2,500円+税
ISBN 4-86018-089-5

足立良夫(あだちよしお)
1953年4月生まれ。
京都大学農学部卒。
外食産業、不動産鑑定会社勤務を経て、
88年不動産鑑定士足立良夫事務所を設立。

代表取締役
不動産鑑定士
不動産コンサルタント技能登録者


PUBLICATION地価汚染〜地価に潜む土壌汚染

学際的研究の必要性と成果として

 不動産鑑定士として土壌汚染問題に関わるようになって6年以上の歳月が過ぎていった。当初思った以上に厄介な事案であった。今もそう思っている。不動産鑑定評価の専門的な知識だけで解決できる問題ではないのである。
 地中の土壌や地下水に関わる話なので地質学の知識がほしい。特定有害物質を知るには有機化学・化学分析、除去等の措置は土木工学など、みな理科系分野の教養、せめて基礎知識が必要である。土壌汚染対策法を理解するには行政法、民法上の瑕疵概念との整合性をみるには私法のセンスと判例の研究、リスクとしての把握、スティグマの定量化には数理統計学、環境学にも法律分野・経済学のジャンルからのアプローチ、保険に関する知見も必須だろう。土地利用の制約を考察するには行政法規は勿論のこと、建築学的な素養も身に付けたい。土壌汚染と不動産価格評価の関連性を解きほぐすためには、本当に博学的でなければならない。すべてを体得することは無理だということは分かっているが、せめてそれぞれの分野の専門家達と十分に意見交換できるようになりたい。そのような意識でこの事案に携わってきたと思っている。そして少しは願いが実現できてきた思う。それぞれの分野ごとに理論的な掘り下げはできないが、広く身に付けた基礎知識を使って多方面から俯瞰しつつ、土壌汚染事象を不動産価格に置き換えて考察し、一定の結論を導き出してみたい。土地価格との関係について是非とも表現の機会を持ちたいと思うようになってきた。

市場の代弁者としての視座

 2年半前にやや拙速であったかも知れないが、願いの第一弾として拙著「土壌汚染と土地価格の評価の実務」(株式会社さいと不動産投資顧問)を上梓した。その後、多くの実例に接し、より多数の専門家達と知り合い、議論してきた。結果を本書に現わすことができた。拙著をベースにしているが、各所で意見を大胆に変更している。不動産の価格に最終結論を見出すために一番重要なことを再確認できたからだ。最も肝心だったことは、不動産市場に視座を据えることであるのだ。不動産評価とは、市場の代弁者でなければならないことを、土壌汚染事象を通じて改めて確認できたからである。

本書の構成

 思い切って単純化した2部構成としてみた。土壌汚染という事象をいかに認識するかという前段と、土地価格の評価はどうなるのかという後段である。目次の概略は次のとおりである。

  • 第1章 土壌汚染に関わる認識
    • 1.土壌汚染とは
      • (1) 事象としての基本的な要件
      • (2) 土壌汚染の法的な意義
      • (3) 土壌汚染の経済的な特性(意義)
      • (4) 不動産価格の評価理論上の特性(意義)
      • (5) 土壌汚染の定義
    • 2.土壌汚染の調査と認識
      • (1) 土壌汚染の発見
      • (2) 土壌汚染調査の内容と目的
    • 3.除去等の措置
  • 第2章 土壌汚染に関わる土地価格の評価
    • 1.土壌汚染が存在しない土地
      • (1) 土壌汚染の調査レベルと認識
      • (2) 基本的な評価の考え方
      • (3) 評価手法の適用方法
      • (4) 留意点
    • 2.土壌汚染が価格形成に大きな影響を与えることがないと判断した土地
      • (1) 土壌汚染の調査レベルと認識
      • (2) 基本的な評価の考え方
      • (3) 評価手法の適用方法
      • (4) 留意点
    • 3.土壌汚染が価格形成に大きな影響を与えると判断した土地
      • (1) 土壌汚染の調査レベルと認識
      • (2) 基本的な評価の考え方
      • (3) 評価手法の適用方法
    • 4.土壌汚染が存在する土地
      • (1) 土壌汚染の調査レベルと認識
      • (2) 基本的な評価の考え方
      • (3) 評価手法の適用方法
    • 5.特別な対応をする土壌汚染地の価格の評価
      • (1) 公共用地の取得価格
      • (2) 担保評価の問題
      • (3) 相続税の時価評価
      • (4) 固定資産税評価

アスベスト問題と評価の関わり

 初稿を書き終えた頃から健康被害を与えるアスベスト禍が連日紙上に取り上げられている。不動産評価上の基本的な実務上の対応は、土壌汚染と類似する。そこで本書でも急遽「あとがきにかえて」でアスベスト問題を取り上げることにした。本文とあわせて読んでいただきたい。

 全国の書店で購入していただけます。
 お近くの書店にない場合は、下のボタンをクリックしてメールフォームからお問い合わせ・ご注文いただくか、左のボタンから申込PDFをダウンロードしてお申し込みください。
地価汚染〜地価に潜む土壌汚染